河井寛次郎
私は木の中にゐる石の中にゐる、鉄や真鍮の中にもゐる、
人の中にもゐる。
一度も見た事のない私が沢山ゐる。
始終こんな私は出してくれとせがむ。
私はそれを掘り出し度い。出してやり度い。
私は今自分で作らうが人が作らうがそんな事はどうでもよい。
新しからうが古からうが西で出来たものでも
東で出来たものでも、そんな事はどうでもよい、
すきなものの中には必ず私はゐる。
私は習慣から身をねじる、未だ見ぬ私が見度いから。
私は私を形でしやべる、土でしやべる、火でしやべる、
木や石や鉄などでもしやべる。
形はじつとしてゐる唄、
飛んでゐながらじつとしてゐる鳥、
さういふ私をしやべり度い。
こんなおしやべりがあなたに通ずるならば
それはそのままあなたのものだ。
その時私はあなたに私の席をゆづる。
あなたの中の私、私の中のあなた。
私はどんなものの中にもゐる
立ち止つてその声をきく
こんなものの中にもゐたのか
あんなものの中にもゐたのか
あなたは私のしたい事をしてくれた、
あなたはあなたでありながら、
それでそのまま私であつた
あなたのこさへたものを、
私がしたと言つたならあなたは怒るかも知れぬ。
でも私のしたい事を
あなたではたされたのだから仕方がない。
あなたは一体誰ですか
さういふ私も誰でしやう
道ですれちがったあなたと私
あれはあれで、あれ
これはこれで、これ
言葉なんかはしぼりかす
あれは何ですか、あれはあれです。
あなたのあれです。あれはかうだと言つたなら
それは私のものであなたのものではなくなる。
過去が咲いてゐる今
未来の蕾で一杯な今



(


記念館近くの海岸


雲の奥にも別の階段が・・・
行き
帰り